上野まり子のアジアンスター

チョン・ドヨン主演映画『マルティニークからの祈り』8月29日(土)公開



アルティニークからの祈り
© 2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
8月29日(土)公開
TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー

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 こんにちは 上野まり子です。
衝撃の実話を元にした韓国映画『マルティニークからの祈り』が8月29日(土)公開となる。
それは平凡な主婦が生活を支えるため、ある品物をフランスに運ぶという話に乗ってしまったことが発端となった。この事件は2006年に韓国のドキュメンタリー番組「追跡60分」で紹介され、韓国国民に大きな衝撃を与えた。凄惨な児童虐待の現場を描き、世界を震撼させた映画『トガニ 幼き瞳の告白』に続く衝撃作『マルティニークからの祈り』、主演はカンヌ映画祭主演女優賞受賞歴を持つチョン・ドヨン。ちょっと頼りない夫役には日本でも人気のコ・ス。二人の娘には新世代子役スターカン・ジウを起用。

 マルティニーク、それはカリブ海に浮かぶフランス領の島で、コロンブスに「世界で最も美しい場所」と言わしめた島で、かのナポレオンの妻の出生地でもある。

 映画は2004年10月30日 フランス・オルリー空港に降り立った主婦ジョンヨンの不安そうな表情で始まる。夫ジョンヘとともに自動車修理工場を営みながら、幼い娘ヘリンと慎ましく、平凡な生活をしていたジョンヨン。
 しかし気の良い夫が知人の借金の保証人になったことから事件に巻き込まれていく。家からも追い出されてしまった家族、次第に気持ちが荒れていく。そんな中夫の友人から持ち込まれた話はパリまで「金の原石」を運ぶだけで多額の現金が手に入るというもの。あまりの窮地にジョンヨンはその話に自ら乗ってしまう。
 そしてパリ・オルリー空港。だがジョンヨンはあっという間に拘束されてしまう。「金の原石」と信じて運んだその荷物は麻薬だったのだ。その日から言葉も通じない異国の地で長い拘束生活が始まる。刑務所での生活も3か月になった時、ジョンヨンは南国カリブ海に浮かぶフランス領マルティニークの刑務所に移送されることに。

コ・ス チョン・ドヨン  夫婦の憧れに地マルティニーク島、しかしジョンヨンは更に過酷な刑務所生活を強いられる。夫ジョンベも妻の拘束を知ってからこの話を持ち込んだ知人はもちろん、警察や外交通商部などにも掛け合うがなかなか相手にしてもらえない。幼い娘ヘリンを抱えながら自分の不甲斐なさと嘆く日々。それでも懸命に妻の行方探しに奔走する。そんな中友人がネットの書き込みを使って窮状を訴えかける事を思いつく。それを見つけたTV番組のプロデューサーが声を掛ける。
そして、この放送を機に在仏大使館のずさんな対応が明るみに出ることに。ネットユーザーたちの大きな支援もあり、ジョンヨンの家族の元へ帰りたいという祈りは通じることになる、765日間もの長く辛い日々の後に。

 監督は元女優のパン・ウンジン。監督デビュー作は『オーロラ姫』で、その年の映画評論家賞新人監督賞を受賞している。地球の反対側にある人里離れたマルティニーク刑務所に収監された平凡な韓国人主婦が、2年間にも及ぶ悪夢のような日々を過ごし、家族の元へ帰るまでを描きたかったというパン監督。家族が心安らかに、笑って過ごす事がいかに大切かと話す。

 5か国もの言語が飛び交うドミニク共和国の撮影現場、特にジョンヨンが置かれている立場とは対照的な絶景と言える美しい海辺。ジョンヨンが無言のままカリブ海を見つめるシーンは、ほんの少しでも彼女の癒しとなればと重点を置いて撮影された。

 韓国映画界の華、チョン・ドヨンはシナリオを見て何より胸が痛かったと語っている。キャラクターに入り込んだ為、ただでさえ華奢な体はさらにやせ細り、やつれてしまった。夫ジョンベ役のコ・スは情けなさを強調するため、あえて体重を増量、どこにでもいそうな男を体現し、極限に置かれた辛い心情を見事に演じきった。

 最も印象に残っているシーンとして、チョン・ドヨンは初めて発言が許される法廷のシーンをあげ、体の震えが止まらなかったと振り返っている。またコ・スはマルティニーク島でやっと妻と会えた時の「代わりに私が帰ってはダメ?」という彼女のセリフに、そうしようと言ってあげたかったとジョンベの辛い心境をあげた。

 ソ・ヨンヒプロデューサーは、事件の主人公が帰国した瞬間に“非常口”というハングル文字にとめどなく涙が流れたという話に、日ごろ当たり前でさほど重要だと思っていない些細なことが、ともすれば私たちの人生を支える大きな源になっているのではないかということをこの作品を通じて伝えたかったと話している。

【今日の一言】
 私の番組でインタビューをさせていた事のあるコ・ス氏。端正な顔立ちに独特の雰囲気を持っている。良い意味で“天然”と言える彼が、作品に出演するとまるで別人と化す。ジョンベとは違うが、どこか頼りなさを感じたかと思うと、次の瞬間には確固とした信念を見せる。まさに“不思議な人”という印象を持ったものだ。
 チョン・ドヨンは言わずと知れた韓国映画界の至宝、演技力に関して世界が認めるところだ。本作でもジョンヨンその人であるかと思う程の入れ込みようには脱帽だ。まさに俳優と言える。ジョンヨンの辛い心情は女性監督ならではの感覚で描かれており、チョン・ドヨン、パク・ウンジンが揃ってこその作品に仕上がっていると思う。
それにしても韓流というタイトルに溺れずにしっかりと自身の道を歩んでいるコ・スに拍手を送りたい。

彼女が愛する家族のもとへ帰るため闘った、衝撃の765日間の真実
マルティニークからの祈り
アルティニークからの祈り
© 2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
8月29日(土)公開
TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー

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【概要】
『マルティニークからの祈り』
2013年 韓国
監督:パク・ウンジン
脚本:ユン・ジノ
プロデューサー:カン・ミョンチャン、ソ・ヨンヒ
主演:チョン・ドヨン(シークレット・サンシャイン [DVD]
コ・ス、(高地戦グリーンローズ
カン・ジウ(怪しい家政婦)
ぺ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ他
配給:CJ Entertainment Jaoan



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