上野まり子のアジアンスター

映画『道〜白磁の人〜』6月9日(土)いよいよ公開

『道〜白磁の人〜』

こんにちは 上野まり子です。
映画『道〜白磁の人〜』が構想から7年、制作に3年を費やして6月9日(土)公開となる。『道〜白磁の人〜』は、小説「白磁の人」(江宮隆之著)の映画化。韓国併合期の朝鮮半島に23歳で渡り、林業技手として山林の緑化復元に貢献するとともに、白磁に代表される朝鮮工芸の美しさを伝え、民芸運動の祖 柳宗悦に多大な影響を与えた浅川巧の生涯を描いた作品だ。浅川巧は、植民地時代の差別意識に影響を受けることなく、民族の壁を越えて朝鮮人と深い友情を育んだ。1931年歳で惜別の死を迎えた浅川の棺は日ごろのその暖かい人柄で追悼する朝鮮の人々が競って運んだという。そして浅川巧の墓は現在でもソウル市忘憂里(マンウリ)の共同墓地にあり、韓国の人々によって大切に守られている。
山梨県で生まれた浅川巧が秋田の営林署での勤務を経て統治下の朝鮮半島に渡ったのは1914年。そこにはすでに母や尋常小学校教師として赴任していた兄一家が住んでいた。当時日本は植民地統治機関として京城に朝鮮総督府を置き、朝鮮人の民族意識を軍の力で抑えつける武断政治を行っていた。そんな中、浅川巧は林業試験場の技術者として朝鮮の山を緑に帰す使命感を抱いて勤務する。多くの日本人が朝鮮人を蔑視する中、浅川巧は同僚のイ・チョンリムに朝鮮語を習い、自ら朝鮮人の世界に溶け込もうと努力し、民族の壁を越えた交流を深めていく。偏見や驕りに囚われることなく信じる道を進む真摯で誠実な浅川巧。チョンリムも次第に心を開いて行き、やがて二人は朝鮮の山を緑に戻すという使命感に信頼を深めていく。また浅川巧は兄伯教の導きで白磁の壷や碗、膳やたんすなど朝鮮工芸品の美に魅せられて収集や研究を進め、やがて朝鮮民族美術館の設立に至る。それが柳宗悦の民族運動に繋がって行く。しかし二人の友情は1919年の3.1独立運動を期に民族と国家の高い壁に引き裂かれる。白い朝鮮服パジ・チョゴリを身に纏い、朝鮮人と同じように生きようとする浅川巧にチョンリムはそんな格好をしても朝鮮人にはなれないと断言する。二人の友情の行へは・・・。

『道〜白磁の人〜』
© 2012 「道〜白磁の人〜」フィルムパートナーズ

素朴で温かみがあるまさに白磁のような人 浅川巧には新ドラマ『南極大陸』やドラマ『JIN-仁-』、舞台「オーデュボンの祈り」などで話題の吉沢悠。現在はNHK大河ドラマ『平清盛』で藤原成親を演じている。浅川巧の同僚イ・チョンリム役にはドラマ『朱蒙 チュモン』、『華麗なる遺産』、『トンイ』で日本でもすっかりおなじみの顔となったぺ・スビン。コミュニケーションは目と行動でとったと話す。吉沢も国や言葉の違いは何の障害にならなかった。“この映画は私たちが守るべきものは何か、大切にしなければいけないことは何かを教えてくれます。”と語っている。監督は『光の雨』、『丘を越えて』、『禅 ZEN』 など実在の人物と事件をもとに人間と社会の深遠を鋭く描く高橋伴明。劇中 “日本人と朝鮮人が分かり合えるのは無理なのだろうか”と弱音を吐く浅川にチョンリムが“夢であったとしても、それに向かって行動することに意味があるのではないですか”と言わせる。高橋伴明監督はこのシーンに私が語りたいテーマが象徴的に表れていると語っている。また日韓のスタッフが友情関係を築き、主演の二人が親友になったのが、この映画の最大の成果であり、これこそ浅川巧が望んだことだろうと話している。 これまでタブー視され、映像化されることのなかった日本統治時代の朝鮮半島を真正面から描き、時代が生んだ哀しい運命に抗おうとした浅川巧の半生を描いた『道〜白磁の人〜』、今週末、6月9日公開。
*公開前に行われた試写会舞台挨拶、会見等は公開中、順次掲載していく予定。


明日、世界が滅びるとしても     
            今日、二人は木を植える。


『道〜白磁の人〜』
© 2012 「道〜白磁の人〜」フィルムパートナーズ
6月9日(土)公開
新宿バルト9 有楽町スバル座、他全国ロードショー
公式サイト

【作品概要】
時代の壁を乗り越えて生きた、男二人の美しき友情の物語。
かけがえのない友情を描く物語が生まれた。浅川巧とイ・チョンリム。林業技師として、朝鮮の山を緑に戻すという使命感で結ばれた二人は、共に山々を歩き、語り合い、信頼を深めて行く。しかしチョンリムは抗日運動の容疑で投獄されてしまう。今、時代の悲しみが二人の間を切り裂こうとしていた・・・・。「禅 ZEN」の高橋伴明監督が混迷の2012年におくる信念の道。観た人の心を涙で洗う、史実から生まれたヒューマン・ストーリーがここに誕生!

監督:高橋伴明
脚本:林民夫
原作:江宮隆之 (「白磁の人」河出書房新社 刊)
製作総指揮:長坂紘司
エグゼクティブ・プロデューサー:與田尚志/倉内均
プロデューサー:紀伊宗之/小川勝広
出演: 吉沢悠 ペ・スビン酒井若菜 石垣佑磨 塩谷瞬 黒川智花 近野成美 チョン・ダヌ チョン・スジ/市川亀治郎/堀部圭亮 田中要次/大杉漣 手塚理美
製作:小説「白磁の人」映画製作委員会/「道〜白磁の人〜」フィルムパートナーズ
制作:アマゾンラテルナ
制作協力:CJ Powercast
配給:ティ・ジョイ
助成:文化芸術振興費補助金 助成自治体:山梨県(予定)/北杜市

【ストーリー】 浅川巧の歩いた道をめぐる時間の旅。
1914年に朝鮮半島に渡り40歳の若さで亡くなった実在の日本人、浅川巧。豪雨の中の葬儀では、追悼する朝鮮の人々が競ってその棺を担いだと伝えられる。偏見や驕りに毒されることなく、私利私欲とは無縁に自らの道を歩んだ巧の人生は、その没後80年になる今を生きる私たちの心にも深く響く。「道〜白磁の人〜」は観る人の心をボーダレスにする、智の冒険でもあるのだ。



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